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ある鳥のお話し

2024.05.02
  • 読みもの

昔、ニュージーランドに神様の兄弟がいました。
兄は森の神であり、森に住む生きものに命を授けました。弟は空の神であり、空に住む生きものに命を授けました。
しかし最近、兄には気がかりなことがありました。我が子である森の木々たちの元気がないのです。森の地中に増えすぎた虫たちが、木々の根を食い荒らしているようなのです。そのことを、空の神である弟に相談すると、弟は我が子である空の鳥たちを呼び集め、こう語りかけました。

「空に住む鳥たちよ、誰かひとり、空から降りてきて、森の地面で虫を食べ、暮らしてはくれないか?そうすれば、木々たちは助かり、木々を住処にしている君たちも守られる。誰かひとりでいい、降りてきてはくれないか?」

空の鳥たちはみな、静まりかえりました。
空の神は、空の鳥「トゥイ(ミツスイ)」に言いました。
「トゥイよ。空から降りてきてくれるかい?」
トゥイは木々を見あげ、空に輝く太陽を見ました。そして、冷たく暗い地面を見おろし、身震いしました。
「空の神さま、森の地面は暗すぎます。私は、暗い場所が怖いのです。」

ほかの鳥もみな、とても静かでした。どの鳥もしゃべりませんでした。

次に、空の神は「プケコ(ケイセイ)」に言いました。
「プケコよ。空から降りてきてくれるかい?」
プケコも木々を見上げ、葉を透かす太陽を見ました。そして、冷たく湿った地面を見おろし、青ざめました。
「空の神さま、森の地面はジメジメしています。私は、足を濡らしたくありません。」

さらに、空の神は「ピピファラウロア(カッコウ)」のほうを向いて言いました。
「ピピファラウロアよ。空から降りてきてくれるかい?」
ピピファラウロアは木々を見上げ、太陽を見ました。そして、自分の家族に目をやりました。
「空の神さま、私は今、巣作りが忙しいのです。」

ほかの鳥もみな、とても静かでした。どの鳥もしゃべりませんでした。

空の神の心は、悲しさでいっぱいになりました。
もし、空の鳥たちが誰ひとり降りてこなければ、兄は子供たちである木々を失うだけでなく、我が子である鳥たちもその住処を失うのですから。

空の神は「キウイ」のほうを向いて言いました。
「キウイよ。空から降りてきてくれるかい?」
キウイは木々を見上げ、太陽を見ました。そして、家族を見渡し、冷たく湿った地面を見おろしました。最後に、仲間である空の鳥たちを見渡し、空の神に告げました。

「私が行きましょう。」

キウイのその言葉に、空の神と森の神は喜びました。しかし、森の神である兄は、地上に降りたあとのキウイに、何が起こるかを告げなければなりませんでした。

「キウイよ。森の地面で暮らすには、強くて太い足が必要になります。そして虫を捕るため、目立たぬように、その美しい色とりどりの羽と翼を手放さなくてはなりません。
もう二度と、空には戻れないのです。もう二度と、光あふれる大空を飛ぶことはできないのです。」

みんな、静まりかえっています。
そして、空の神は言いました。
「キウイよ。もう一度聞きます。空から降りてきてくれるかい?」

キウイは、もう一度木漏れ日の先の太陽を見あげ、静かにさよならを言いました。そしてもう一度、その色鮮やかな羽と翼を見て、静かにさよならを言いました。
そして、まわりを見渡してから、皆に聞こえるように言いました。

「はい。私が行きましょう。」

空の神は、空の鳥たちにむかい、言いました。
トゥイよ。あなたは臆病すぎて空から降りてこられませんでした。これからは臆病者の証として、喉に2つの白い羽をつけて生きるのです。」
プケコよ。あなたは足を濡らしたくないと言いました。これからは、永遠に沼や湿地を住処として生きるのです。」
ピピファラウロアよ。あなたは巣作りが忙しすぎると言いました。これからは、自分の巣を持つことは一生叶わず、ほかの鳥の巣に卵を産みつけて生きるのです。」

「そして、キウイよ。あなたは皆のために、大きな犠牲を払いました。あなたはこの先ずっと、ニュージーランドでもっとも有名で、誰からも愛される鳥として生きるのです。」

【ニュージーランド マオリの神話より】

いずみ後援会の公式マスコットの「キュン」は、このキウイバードがモデルです。
みんなの「ありがとう」の気持ちから生まれました。
いずみの森に暮らしながら、附属小のみんなを見守っています。

キーウィはニュージーランドの国を象徴する鳥(国鳥)。また、キーウィは、ニュージーランドのシンボルとして19世紀後半に連隊バッジに初めて登場した。その後、1886年にサウスカンタベリー大隊のバッジ、1887年にヘイスティングスライフルボランティアのバッジに登場し、多くの軍事バッジにキウイが登場した。 1906年に生まれた靴のケア用品「キィウイ英語版)」がイギリスとアメリカで広く販売されるようになり、ニュージーランドのシンボルとして知られるようになった。
キーウィはニュージーランドの最も有名な国民的シンボルになり、ニュージーランドの多くの都市、クラブ、組織の紋章やバッジに使われている。 ニュージーランド空軍、ニュージーランドラグビーリーグのロゴに使われており、ラグビーリーグニュージーランド代表は「Kiwis(キウイズ)」という愛称で知られる。
ニュージーランド・ドル(NZD)の1ドル硬貨の裏にはキウイがデザインされており、外国為替市場などでNZDはしばしば「Kiwi」と呼ばれる。キーウィはオスが巣作りや子育てをすることから、献身的に家事や子育てをする父親を「Kiwi husband(キウィの旦那)」と呼ぶ。
出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』